上手なフィードバックとは

 寒の戻りでモサモサと雪の降る中、論文レビューのグループワークへ。


それぞれに先行研究のまとめを書く過程で、5名のグループ内でお互いに途中経過の原稿に対してフィードバックをしあうセッションがあったのだ。建設的なコメントをする練習をすることで、客観的に自身の執筆を振り返ると共に、査読の練習も兼ねている(最後に完成版に対しても担当が割り当てられ、レビューをしないといけない)。

実のところ、仕事でさんざんフィードバックをしてきたので、楽勝でしょうと思っていた。が、

そうでもなかった!

仕事では書き手とゴールを共有しており、そのゴールに向けた資料として果たして適切かを確認するのに対して、違う分野で違うトピックスを扱う人の先行研究のまとめにコメントするというのは、ゴールも基礎知識も共有していない状態でアカデミックな論文の冒頭部分として機能するかを確認する作業になる。論理展開のスムースさやテクニカルな部分などは勿論コメントできるにしても、そもそもこの問いの立て方が適切なのか、どういう切り口が望ましいのか、果たしてどこまでが共通認識と考えて良いのか、私が理解できないのは単に基礎知識が足りないからなのか等難しい。

そんなわけで色々と頭を悩ませながらフィードバックをしたので、他人のフィードバックの様子を聞くのは非常に勉強になった。チームメイトが多様なだけあって、スタイルもそれぞれ。

中でも感心したのは20代半ばのドイツ人の子。彼女は職務経験があるのだが、入社した時から部下持ちだった(ドイツでは大学を出て専門ど真ん中な職務に就く場合、いきなり高卒スタッフなどをまとめるポジションに就くこともある。)だけあり、フレンドリーに執筆者の意図を引き出すのが本当にお見事。彼女のフィードバックというより質問に乗せられて執筆者がベラベラと話すと、周りも「それ、それ書きなよ」「それ今の文章だと伝わってないよ」と言う感じで、本人が自ら方針に到達できるよう上手く誘導していた。

対照的に元政府高官だったクラスメイトは指摘は的確なのだが、命令口調で厳しい(笑)本国ではきっと一言いえば周りが意を察して動いていたのだろう。フィードバックされた側はちょっとムッとしていた。それでも他人からのフィードバックを受け止めるという点に関しては、芯はあり反論しつつも素晴らしく柔軟で、さすが学びに来ているだけあるなと。

私はグローバルな組織で働いたことはないので、そういうシーンを思い浮かべる良い機会になった。それぞれの文化的なバックグラウンドや性格も踏まえながら適切にフィードバックを行うというのは、簡単なようで難しい。

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